今思い返せば、私がミラさんに初めて出会ったのは湖で絵を描いていた時なのかもしれない。すこし目の端に映ったくらいだったから何も気にしてなかったけれど、あの時から視界の端に彼女の姿があったような気がする。
そして、初めてちゃんと彼女と話をしたのも同じように湖で絵を描いている時だった。新品のスケッチブックを持って可愛い魚たちを見ながら海の絵を描いていたら、急に「見つけたよゴースト、もう逃がさない!」なんて叫び声が聞こえてきて、何事かと思って声のした方向を振り向いたら、その瞬間人が飛びかかってきた。倒れ込んだ私は本当に本当に何事かと思って顔を上げると、そこには見慣れないハッフルパフ生が居た。あの時の私はきっととんでもなく怪訝な顔をしていた。少し話すと彼女は私をゴーストだと勘違いしてたらしく、友達に私の存在を証明するために捕まえようとしたらしい。変なやつだと怒ってやろうかとも思ったが、それを聞いたらあまりにおかしな理由に笑ってしまい、どうでも良くなった。
……でも、そのおかげで新品のスケッチブックと海の絵が本当に海になってしまったので、そのことはしっかりと怒っておいた。

ある時、私はミラさんに愛しの魚たちを紹介したくて、湖のお絵描きについてきて貰ったことがある。私と仲良くなった人が1度は辿る道だ。「こっちに来て、可愛い子が沢山いるんだ」と湖に連れて行って、魚たちを1匹ずつ紹介した。他のみんなと同じように「違いが分からない」とは言われたけど、ミラさんには一つだけ、他の人と違うところがあった。興味を示さず少し変な目で魚と私をみる他の人と違って、彼女はなんだか、キラキラした目で魚を見つめていた。私はそれを魚たちが可愛いと、魚たちの可愛さに気づいてくれたのだと思って、もっと色んなことを話した。魚は魚でも色々な名前の魚がいるし、大きさも違う。だからそれぞれの魚の種類や大きさについて話してちゃんと名前を覚えてもらおうと話していたら、彼女は一言呟いた。「“寿司にしたら美味しそうだな”」。英語ではなかったのでなんと言ったのか分からなかったが、彼女の出身はこの辺りではなかったはずなので、ついつい母国語で褒めてしまうくらいに魅力に気づいてくれたのだと嬉しく思い、なんと言ったのか説明を求めた。するとなんと彼女は言った。“寿司”という日本のとても有名な食べ物があって、それは新鮮な魚なんかをバラバラにして、それを、お米に乗せて食べる食べ物で、そして、この魚たちを寿司にしたら美味しそうだと言ったと、そう言った。この可愛らしいうみちゃんやみずちゃんやぴちぴちちゃんらを、バラバラにして、お米に乗せて、最後には食べてしまうと美味しそうだと言ったのだ!目の前の彼女を同じ人間だと思えなかった私は、彼女に「寿司の話は二度としない」と誓わせるまで、魚たちの可愛らしさと命の尊さを語った。
しかし日本人は何を考えているのだろう。あの国では魚は肉と並ぶくらいによく食べられるらしい。信じられない。初めてフィッシュアンドチップスの存在を知った時と同じくらいに絶望に打ちひしがれた私は、生涯何が起ころうとも絶対に日本に行かないと決意した。

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