カナの輪
クリスマス休暇が終わると春学期が始まる。ミラがホグワーツに帰ってきた最初の日、ダンブルドア校長によって生徒たちは全員、速やかに大広間に集められた。
ミラは重い樫の扉を押し開き、大広間に入った。そして、中の様子が全部目に入ったとたん、ミラは驚きから口をポカンと開いてしまった。
生徒たちが座るはずの長テーブルがない。教授方のテーブルもだ。全て片付けられてしまったようで、大広間はひどく殺風景なものに様変わりしていた。
上座には各寮の寮監が立っていて、少し離れたところにはアーガス・フィルチもいた。みんなにこりともせず、唇を真一文字に結び、深刻そうな顔をして生徒たちを待っていた。
「なにかあったのかな」ミラはすぐ隣を歩いていたアダリンに話しかけた。
「わからないわ……」アダリンは教授方の顔色を窺いながら答えた。
ミラとアダリンはおずおずとハッフルパフのテーブルがあったであろうところまで歩き、そこで待つことにした。
大広間の魔法がかけられた天井は、いつもは墨を流したような夜空に星が点々と光っているのに、今日にかぎってどんよりとしていた。その張りつめた空気に、ミラは体の隅々までビリビリと電気が流れるような感覚がした。
怪訝な顔であたりを見回していたミラは、しばらくしてウィーズリー兄弟たちが入ってくるのに気づいた。
青白い顔をしたチャーリーを先頭に、他の三人もおんなじ顔色であとに続いている。あのフレッドとジョージでさえ麻痺したようにとぼとぼと歩いていたので、ミラはいよいよ決定的に気分が悪くなってきた。
ミラの周りの生徒たちも大広間全体に漂っている不吉な空気に気づき始めたようだ。なるほど、どうやら事情を知っている生徒とそうでない生徒がいるらしい。
上座のすぐ前ではジェイやアリーシャ・スミス、チューリップ・カラスなど、見たことある顔がいくつかあった――驚いたことに同級生のセドリック・ディゴリーもいる――みんな悲しそうな顔をしていて、口々に何かを話し込んでいる様子だった。彼らは事情を知っている側の人間なのだろうと、ミラは思った。
大広間が動揺する生徒たちでいっぱいになった頃、ついにアルバス・ダンブルドア校長が入口から現れた。
生徒たちの人垣がパッと割れ、道が開いた。ダンブルドア校長はその道をゆっくりと歩き、「ふくろうの演台」の前に立った。
「昨夜、想像もできないような邪悪な存在の手によって想像もできない損失をこうむった」ダンブルドア校長は悲しみを含んだ目つきでみんなを見た。「献身的な生徒であり友であったローワン・カナが、別の命を救うために自らの命を犠牲にしたのじゃ……」
想像もしていなかった話に、まるで大広間中の酸素が一瞬にしてなくなってしまったかのようにミラは息ができなくなった。
「これほど高潔な行いはない。だから、今日はローワン・カナの|命を奪った犯人については語らん。じゃが、その犯人にはきちんと裁きを受けてもらう――」
カナさんが、死んだ?いや、殺されただって? ミラは頭の中で、ダンブルドア校長の言葉を何度も反芻させた。
ミラはにわかに信じられなかった。急にそんなこと言われたって、カナさんのことは今でもはっきりと思い浮かべることができるのだ。双子の実験室で初めて出会った時の優しげな眼差し、それにクィディッチの試合ではミラの下品な声援で苦笑いをさせた……カナさんがミラに向ける顔は、どんな顔でも温かった。
それなのに――亡くなったなんて考えられない。一体何があったのか。あんなに優しい人がどうして殺されなければならなかったのだろうか。
喉がゴクンと鳴ったきり、何かが詰まったような感覚がした。横にいたアダリンは衝撃で顔を歪ませていた。
誰かが音のスイッチを切ったかのように大広間にはサーッと沈黙が流れた。ミラの耳が急に聞こえなくなったようだった。受け止めるには重すぎる事実に頭をガツンと強く打たれたようで、ダンブルドア校長の演説がどこか遠いところで行われているようにさえ感じていた。
「皆、いろいろな形で悲しみを乗り越える。そして、それには長い時間が必要じゃ」ダンブルドア校長が言った。「悲しみ……恐れ……怒り……間違った感情などないのじゃ」
グリフィンドールの方から、パーシーの鼻の啜る音が聞こえる。アダリンはもうずっと俯いたきり顔をあげようとしない。ホグワーツ全体が、深い悲しみに包まれていた。
ダンブルドア校長は、ローワンの夢がいつかホグワーツで教鞭を取ることだったこと、またその夢を称えるようなことを語るといったん口を閉じた。それからダンブルドア校長は喪失感に駆られたように短いため息をついた後、眼鏡をずらして生徒を見渡し、こう続けた。
「当面は、皆が気持ちの整理をできるように授業を中止することにした」
ちっとも嬉しくない。何よりも魔法を学ぶことにうんざりしていたはずなのに、ミラの気持ちは晴れるどころか沈んでいく一方だった。青白い顔のままのフレッドとジョージの様子を見るに、彼らもきっと同じ気持ちに違いない。
「今は皆が不安と悲しみを感じている時じゃ。ローワンの高貴な夢を導きの灯りにするとよいじゃろう……このようにな……」
ダンブルドア校長はそう言うと懐から杖を取り出して高くかざし、杖灯かりを点した。
「賢く、勇敢で、学習意欲が旺盛で、友達思いのローワン・カナの記憶は輝き続けるじゃろう」
ダンブルドア校長の言葉を皮切りに、生徒たちもおんなじように杖を取り出し、杖灯かりの呪文を唱え、腕をまっすぐに上げた。
ミラもどこか現実味が帯びないまま――まるで悪い夢を見ているようだと思いながら――杖を掲げ、遠くに旅立ってしまった友のことを想った。
授業が中止になったことで、生徒たちはそのまま談話室まで戻ることになった。しかし、ハッフルパフの一行が談話室に帰ってきても雰囲気は重苦しいままで、誰も何かを進んで話そうとはしない。かといって寝室に戻ろうとする者もいなかった。みんな、今ここにいる友人たちと寄り添うので精一杯だった。
それからしばらくハッフルパフ寮の生徒は囁くようにヒソヒソ話をしたり、また黙ったりとひどく曖昧な時間を過ごしたが、夜がふけるにつれて、いつもの談話室を取り戻しつつあった。
「まだ信じられないよ」ミラの声は掠れていた。「カナさんが、その、死んだなんて……」
「皆同じ気持ちだと思うわ、ミラ」アダリンが答える。「私はカナさんとはあまり関わりがなかったけど、それでもショックだわ。だってこの学校に通う以上、志はおんなじじゃない。それなのに……」
アダリンはそう詰まらせたきり、なにもしゃべらなくなった。二人の間に気まずい沈黙が流れる。沈黙がいつまでも続くような気がしたミラはいたたまれない気持ちになり、身を翻して談話室の出口へと向かった。樽で作られた扉が縦に開くと、その先に待ち受けてた人物にミラは驚いた――フレッドとジョージだ。
「こ、こんなところで一体なにしてるんだい?二人とも」
「ああ、よかった!ミラ、君が出てくるのを待ってたんだ」フレッドがミラを抱きしめて言った。
「ちょっと、まって」ミラはたじろいだ。「いくら授業がなくなったって、今夜はそんな気分じゃ――」
「違う、違うんだよ!ミラ」ジョージが遮るように言った。「君が想像している理由じゃない。本当だよ」
フレッドとジョージはミラを見つめた。確かに、二人とも真面目な顔をしていてどう考えても悪戯をしてやろうというようには見えなかった。ミラはちょっぴり申し訳ない気持ちになった。
「じゃあどうしたの?こんなところまで……」
ミラがそう言うと、フレッドとジョージはミラの肩に手を回し、談話室の入口からできるだけミラを遠ざけた。そして、あたりを見回して人がいないことを確認するとフレッドが先に口を開いた。
「ローワンに何があったか、知りたくないか?」
「そんなの、わからないよ……」
知りたくないといえば、それは嘘をつくことになる。しかし知りたいとも言えなかった。グリフィンドールの彼らに比べれば、ミラとカナさんの関係は浅かったはずだからだ。ミラはここでうかつなことを言う気にはどうしてもなれなかった。
「僕たち、さっきジェイが変身術の教室に向かうところ見たんだ」ジョージが言う。「おかしいだろ?きっと何かしようとしてる。ローワンのことについて……」
「そうだとしても私には何もできないよ」ミラは首を振り振りして答えた。
「ミラ、君は悔しくないのか?どうしてローワンの命が奪われなくちゃならなかったのか。本当の本当に気にならないのかい?」フレッドが歯噛みした。
「そんなわけがないだろう」ミラの声が大きくなった。「今更後悔しても遅いが……できれば、彼女の名前を親しげに呼んでみたかった。私だって彼女を死に至らしめたものがなんなのか知りたいさ。死んではならなかった人だったと心から思ってる。だって、彼女も君たちと同じで――私の顔のこともちっとも気にせず、友人として受け入れてくれた人なんだから」
馬鹿げた理由だろうか。でもいまだにスリザリン顔だの、恐ろしい顔だの、大真面目に言う生徒がいる中で、ミラにとってカナさんのような存在は大きな救いだった。カナさんだけではない、ジェイも、スミスさんも。グリフィンドールの上級生たちはいつだって優しかった。
「それなら決まりだ」フレッドが頷いた。「変身術の教室に行くぞ、ミラ」
教授が不在の変身術の教室には数人の生徒が集まっていた。いつもより広く感じる教室を見たミラに妙な緊張が募る。そんな中で、扉をあけた三人に真っ先に声をかけてきたのはジェイだった。
「フレッド、ジョージ?それにミラまで……なにしてるんだ⁉」
「それはこっちのセリフさ、ジェイ」ジョージが腕を組んで言った。
「コソコソと談話室を抜け出していくなんて、なにかあると思うだろ?」とフレッド。
「君たち、まさかつけてきたのか?」ジェイがうなだれた。
「おっどろいた!」
ここで突然、教授の机に乗り上げていた一人の女子生徒がミラを見て声をあげた。ミラはこの風船ガムのようなピンク色の髪に見覚えがあった――確かハッフルパフの六年生のニンファドーラ・トンクスだ。
「あなたのこと知ってる。ミラ・トウドウでしょ。談話室でいつも見かけていたわ!面白い髪の色をしてるから、すぐ目に入るのよね」ピンク色の髪の女性はミラに駆け寄った。「同じ寮だけど話すのは初めてだよね。私はトンクス。あ、そのままトンクスって呼んでね」
ミラはトンクスさんの握手に応えながら、挨拶を返した。
「はじめまして、トンクスさん。私も貴方のことは知ってます……だってほら、目立つ髪色がすぐ目に入るから。そうですよね?」
ミラの切り返しにトンクスさんはなるほど、と挑戦的に笑うと、突然目をぎゅっとつぶって顔をしかめた。すると次の瞬間、トンクスさんのつんつん突っ立った髪は、ミラとまったく同じ黒と灰色に変わった。
ワッとミラが驚きの声をあげると、トンクスさんはさも得意気な顔で「これであいこね」と言った。次にこの能力が「七変化」というもので、生まれつき外見を好きなように変えられるのだと説明すると、次にトンクスさんは髪を左右に振り乱した――あっという間に風船ガムのピンク色に元通りだ。
ミラと、それを見ていたフレッドとジョージはびっくりするやら、感動するやらの声をあげた。
「ウィーズリー!トウドウ!」次に声をかけてきたのはカラスさんだ。「三人ともよくきたわね。『カナの輪』に入るつもりなの?」
「チューリップ!」ジェイが咎めるような口調で言った。「軽々しく言うなよ。一応秘密の話なんだから」
「『カナの輪』って何⁉」フレッドとジョージが同時に叫んだ。
興味津々な双子の様子を見たジェイは、困ったことになったと頭を抱え、助けを求めるような顔で視線をミラに移した。恐らくミラなら、余計なことに首を突っ込むなと双子を叱ると思ったのだろう。
しかしミラは「カナの輪」に対して少しだけ興味があった。ミラがわかりやすくジェイにそっぽを向くと、ジェイは肩が外れてしまうんじゃないかというくらいに体をしょんぼりとさせた。
「いいじゃない、話してあげましょうよ」ここで間に入ったのはトンクスさんだ。「もちろん、ローワンの事もね。このことは、ローワンの友人全員に知る権利があるわ……」
トンクスさんはまだ何を言おうとするジェイを宥めると、フレッド、ジョージ、ミラに向かって話しはじめた。
トンクスさんはまず、カナさんの死について語った。カナさんは闇の秘密組織「R」のメンバーである闇の魔法使い、パトリシア・レークピック――驚いたことに、彼女は最近まで闇の魔術に対する防衛術の教授を務めていたらしい――が放った「死の呪い」によって命を落としたのだそうだ。
死の呪いについて、ミラは母親から少しだけ教わったことがあった。その呪いを受けた者は傷や印を残すことなく、痛みのない死が与えられる……魔法族にとって最も危険で最悪な呪文だと、ミラはそう聞かされていた。
次に「カナの輪」の話だ。「カナの輪」とは、アリーシャ・スミス、ベン・コッパー、メルーラ・スナイドによって設立された学生組織であった。組織の目的は、最後の「呪われた部屋」を発見すること、そしてそれを追う「R」と戦い、カナさんの復讐を果たすことなのだという。
「それでね、私たち、今はここで何かできることがないか話し合ってたところなの――」
「そこまで。いい加減話しすぎだ、トンクス」ジェイはむっつりとした顔でトンクスさんを見た。「この子たちはカナの輪のメンバーじゃないんだ。それ以上の解説はいらないだろ?」
「何言ってるんだ、ジェイ!」フレッドが吠えた。「僕たちも『カナの輪』に参加するに決まってるじゃないか!」
すぐ隣のジョージも、フレッドに賛同する声をあげた。
「ミラだって、もちろん『カナの輪』に入るだろ?――ミラ?」
ミラは、フレッドが自分の名前を呼ぶ声を聞いてはっと我に返った。この途方もない事実に、まるで「金縛りの呪文」を受けたかのように、驚き、恐れおののいた顔のまま固まってしまっていたのだ。
「む、無理だよ!」ミラは身震いをして一歩下がった。「何ができるっていうんだ!」
「ミラの言う通りだ」ジェイが深いため息をついた。「二人とも……話をきちんと聞いてたかい?僕たちが戦おうとしているのは闇の魔法使いたちなんだ。『まね妖怪ボガート』とはわけが違うんだぞ」
「別にその闇の魔法使いと正面切って戦おうってわけじゃないさ。僕たちの得意技を忘れたの?」ジョージはよどみなく答えた。
「それ、いいかもしれないな」
誰かが突然口を挟んだ――それまで何も喋らず、教室の壁に寄りかかりみんなの様子を見ていたレイブンクローの男子生徒だった。
「どういうことだい?アンドレ」
ジェイが訝しげに聞くと、アンドレと呼ばれた生徒は考え込むような素振りをしながら答えた。
「確かに学生の僕らではレークピックに正面から挑んでも叶わない可能性の方が高い。でもそれなら、狡猾な方法を探すのも悪くないのかもしれない」
「名案じゃない?」カラスさんが甲高く叫んだ。「スパイ活動をするチャンスが訪れた時のために、計画を立てるのよ!」
「変装が必要になったら、誰にもばれない変装を作るよ。なあ、トンクス?」
アンドレさんの問いかけに、トンクスさんは任せなさいといわんばかりに胸を張り、自分の鼻を豚の鼻に変化させて誇らしげな顔をした。
「確かに、それができるだけのユニークな人材がこの部屋には集まっているな……」ジェイは先ほどとは打って変わって興味深げな顔になり、生徒ひとりひとりの顔を順番に見つめていった。
ジェイの言葉で、とたんに生徒たちの雰囲気がパッと明るくなり、教室は瞬く間にああでもないここでもない、と賑やかなおしゃべり声でいっぱいになった。
「ウィーズリー、トウドウ、さっそく使えそうないたずらを考えましょう」カラスさんがフレッド、ジョージ、ミラの三人にこっちへ来いと手招きした。
「待って」フレッドは何かを思いついたかのような顔になった。「ミラはトンクスたちと変装の計画に参加させるべきだ。だってそうだろ?ミラは学年で一番早くにマッチ棒を針に変える呪文を成功させた生徒なんだから」
「そういや、アダリンがそんなこと言ってたな……それはもう悔しそうに」とジョージ。
「どちらも、私じゃ力になれないと思う」ミラは手で胸をぐっと押えながら、低い声で言った。
全員がぴたりとおしゃべりを止め、ミラのほうへ目をやった。ミラの視界にいくつもの心配そうな顔が並んだ。ミラはなにか話してその場をとりなそうと口を開いたが、呻き声しか出てこなかった。
ここで、唯一ひときわ明るい顔のトンクスがミラの前に出てきて言った。
「ミラ、やってみなきゃわからないことはたくさんあるわ」トンクスは続けた。「ホグワーツってそういうのを学ぶところじゃない?」
「僕たちは今、ホグワーツという枠をこえようとしているけどな」ジェイがニヤリとした。
ひどく居心地の悪い沈黙が流れた。そう思ったのはあくまでミラだけだ。他の生徒はみんな、ミラからいい返事が聞けるようにと目をキラキラと輝かせていた。
やがてミラは静かな口調で沈黙を破った。それは、ミラがここでは絶対に言うまいとしていたことだった。
「魔法を――その――つまらないものだと考えている私に――力になれることなんかひとつもありません。フレッド、ジョージ、それにジェイも……君たちはよくわかるはずだ」
トンクスさんたちは、ミラの返事がまったく予想もできなかったというように目を丸くした。言うべきではないことを言ってしまった以上、もうここにはいられないだろう。ミラは引き留めようと手を伸ばすウィーズリーの双子を尻目によたよたと教室の出口に向かい、そのまま出ていこうとした。しかしその時、ミラがノブをひねるよりも前に扉が独りでに開いた。
「ミラ?どうしてこんなところにいるの?」
アリーシャ・スミスがそこに立っていた。スミスさんは見るからにやつれていた――当然だろう。彼女は親友を目の前で失ったばかりなのだから。ミラの目に、スミスさんの貼り付けたような愛想笑いが痛々しく映った。
ミラはやるせない気持ちのまま、何も答えずスミスさんの脇を通り、夢中で廊下を走り去った。(驚いたようなスミスさんの声も無視して)
自分の無力さを感じて悔しい気持ちでいっぱいだった。フレッドとジョージのように二つ返事で了承できればどんなによかったか。二人の活き活きした姿は頼もしく見えたが、ミラにとってはそれが眩しすぎた。
ミラはとことん未熟だった。魔法に関心のない自分が「カナの輪」に受け入れてもらえるはずがないと咄嗟に思ったのだ。それに、いたずらだろうと変身術だろうと、どんな形であれ自分が闇の魔法使いと渡り合えるとはどうしても思えなかったし、その勇気も持ち合わせていなかった。
ハッフルパフの寝室に入るとアダリンや他の生徒はみんなすやすやと眠っていた。ミラはその姿に無性に腹が立って、ガタガタとわざと音を立てながらベッドに入り、乱暴に布団をかぶった。そして、私にできることはないと何度も繰り返し自分に言い聞かせながら、無理やり眠りについたのであった。