決闘呪文

 古い羊皮紙に突如現れたのはホグワーツ城と学校の敷地の詳しい地図だった。しかし、それがただの地図ではないことにミラはすぐ気づいた。
 地図上には動く小さな点で、一つ一つ細かい字で名前が書いてあった。ミラがよくよく目を凝らして覗き込むと、セドリック・ディゴリーと書かれた点が訓練場を歩き回っていた。管理人のアーガス・フィルチは四階の廊下を徘徊している。いつもひどい悪口で突っかかってくるスリザリンの同級生、グラハム・モンタギューはいま、スリザリンの砂時計に夢中のようだ。もちろん、グリフィンドール塔の廊下にはミラ、アダリン、それにフレッドとジョージの名前も……。
 「これ、すごいわ!」アダリンがめずらしく双子を褒めた。「よく解読したわね」
 「そして、チャーリーの謎も解けたみたいだよ」ミラはアダリンに目配せした。
 アダリンがすぐに納得したように「あっ!」と小さな声を上げた。もちろんフレッドとジョージは二人揃ってポカンとしたので、ミラは数日前にチャーリーと話したことをすべて伝えた。聞き終えた双子は満足げに笑いながらお互いの手を叩いた。
 二人はきっと、一晩中地図に向かってあらゆる呪文を試していたのだろう。この古い羊皮紙が何か自分たちの役に立つはずに違いないと。ミラは感心すると同時に、フレッドとジョージが自分を避けていたわけではないと知って少しホッとした。
 「これさえあれば、僕たちは自由だ」フレッドが言った。「気づいたかい?ご丁寧なことに、地図には城からの抜け道もいくつか載っているんだ――ほら、こことか……」
 「ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングス……きっと彼らが発明者だ」ジョージが地図の上に書いてある名前を撫でた。「敬意をもって使わせていただこうじゃないか」
 「そうね、そうだったわ……貴方たちは……」
 フレッドとジョージの言葉を聞いたアダリンがやれやれと肩をすくめ、メガネ越しに呆れた目つきで二人を見た。
 「さて、ここからはミラと僕たちの問題だ」フレッドが目を光らせた。「優等生にはお引き取り願おうか」
 「な、なんだって?」ミラは間の抜けた声を出した。
 「ええ、そうね。そうするわ」
 アダリンはスカートの両端を少しつまみ上げ、恭しくお辞儀をすると、その場を離れようとくるりとミラたちに背を向けた。
 「アダリン!」
 普段ならありえないアダリンの態度にミラは思わず叫んだが(彼女は、なにかしらでハッフルパフが減点されることが一番の恐怖なのだ)、アダリンは顔だけを三人に向けて、ニッコリと笑った。
 「ミラ、正直な気持ちを言うわ」アダリンは続けた。「『カナの輪』の危ない活動より、なるべく今まで通り双子の遊び・・に付き合ってたほうがよっぽど安全だと思うの」
 それからアダリンは、ミラが何を言おうといっさい振り向かずに大階段へと消えていった。どうやら、仲直りしてもそれとこれとは別のようだ。残されたミラはフーッと大きなため息をつき、ニヤニヤと笑うフレッドとジョージに向き直った。
 「で、なにをするって?」ミラは言った。
 「しかたないみたいな言い方するなよ」フレッドはミラの耳元で囁いた。「わくわくしてるくせに」
 ミラはギクリとした。フレッドの言うことはその通りだった。入学してからこれまで何度も城を抜け出したが、いつだって抜け道はひとつだけだった。
 地図にある抜け道を見るかぎり、いままでよりももっと遠くに行けそうだ。城から見える渓谷の先にだって行けるかもしれない。ミラはいまだお目にかかれていない小鬼の「蒸気装置」のことを考えて身震いした。
 「決まりだ」ジョージはすべてお見通しのような笑い方をして「忍びの地図」を指差した。「今日の夜――そう、ここだ――五階の鏡の裏で会おう」
 ジョージのこの提案に、ミラとフレッドは黙ってうなずいた。
 
 フレッドとジョージとのやりとりのあと、ミラは午後の最後の授業を終えて、いったん寮に戻ろうとしていた。途中、アダリンが校庭へと走るのを見送った。そして賑やかな中央ホールを通り抜けてホグワーツの玄関までたどり着いたとき、誰かがミラの背中をポンポンと叩いた。
 「ミラ!」
 ハッフルパフの上級生、トンクスさんだ。
 「今、時間ある?」トンクスさんは今ここでミラと会えたことがこの上もない喜びだというようにニッコリ笑った。
 「トンクスさん、えーと」ミラは驚いてトンクスさんを見つめた。「なにかありましたか?」
 トンクスさんはコホンと咳払いをして答えた。
 「あなたがカナの輪に入ったって聞いた。さっきね」トンクスさんは言った。「きっと私が必要になるんじゃないかと思って」
 「私が、トンクスさんをですか?」ミラは目を丸くして聞いた。
 「『決闘呪文』のことよ」トンクスさんが声をひそめてそう言った。「アリーシャから聞いてない?」
 「なんのことですか?決闘呪文?」
 ミラはトンクスさんの言うことがさっぱりわからなかったので、正直にそう答えた。
 「ああ、そうなのね。わかった」
 首をかしげるミラにトンクスさんは早口に説明しだした。「カナの輪」に参加した生徒たちはみんな、決闘呪文を習う必要がある、ミラがまだホグワーツに入学する前に起きた「呪われた部屋」での数多くの事件が理由だとか、その事件というのは……トンクスさんがそのまま詳しく話そうとしたところで、狐につままれたような表情のミラに気づいてハッと手を口で覆った。
 「もちろん、一年生に危ないことをさせるつもりはないわ。特にあなたにはね。そうでしょ、アダリンにもしつこいくらいに言われたんだもの」トンクスさんはひと呼吸入れて続けた。「でも『呪われた部屋』に関わる以上、全部が安全とは言い切れないでしょう?」
 トンクスさんの深刻な言い方に、ミラは息を呑んで彼女の続きの言葉を待った。
 「今までたくさんの生徒が『呪われた部屋』に巻き込まれた。氷漬けにされたり、夢遊病になったり。長い間、肖像画に閉じ込められていた人だっていたわ。そして今は石になってしまった生徒もいる」トンクスさんは悲しそうな顔をした。「『呪われた部屋』のことなんてこれっぽっちも知らない人たちが巻き込まれたのよ」
 「それほど『呪われた部屋』は危険なんですね」ミラが恐る恐る言った。
 「そう」トンクスさんは言った。「次に狙われるのはあなたかもしれないし、私かもしれないし、周りの友人たち――そう、もしかしたらアダリンかもしれない。考えてみてほしいの。そんな時、あなたがなにかしら抵抗できるすべを持っていたらって。やっつけられなくたって、時間を稼ぐ方法さえ知っていればいいの。そうすれば、不幸な事件を防ぐことができるかもしれない」
 ミラはゴクリと生唾を飲み込んだ。そして、傍らに置かれていた長椅子にドサリと座って白いローブの魔法使いのことを考えた。もしホグワーツにまたシラトリが現れたら?アダリンや、フレッドとジョージ……周りの人間に危害を加えようとしてきたら?日本人が、マホウトコロを追い出された魔法使いが、自分の大事な人たちを……
 ミラは自分の心臓が早鐘のように鳴るのを感じた。――そんなこと、絶対に許さない。怒りという感情だけでドクドクと命を脈動させているような感覚になって、ミラの気持が昂っていった。トンクスさんがその気持を察したようだった。
 「決まりね」トンクスさんが言った。「寮にカバンを置いたら、訓練場に行きましょう」

 ミラはトンクスさんに連れられて校庭の訓練場までやってきた。訓練場を訪れるのはこれが初めてだった。
 訓練場には決闘訓練用の人形がずらりと並んでいた。髑髏の顔をした人形はフードをかぶっていて、お腹のあたりにペンキで描いたような金色の丸印がついている。少し気味が悪いとミラは思った。
 「さっきも言ったけど、相手をやっつけるための呪文を教えるわけじゃないわよ。あくまで自分の身や仲間を守る呪文を、これから教えるの」
 トンクスさんは胸をそらしてそう言って、ローブから杖を取り出した。ミラもそれに続いて慌てて杖を持った――マホウトコロから届いた新しい桜の杖だ。
 「最初にやるべきなのはこれ。『エクスペリアームス、武器よ去れ』。『武装解除術』よ」
 トンクスさんが杖を振って訓練用人形に同じ呪文を唱えた。目も眩むような紅の閃光か走ったかと思うと、人形が握っていた杖が吹っ飛んだ。それから地面に倒れそうなくらいに大きくのけぞったところで足元の車輪がカラカラと回り、ぐらりと体勢を戻した人形は何事もなかったのように元の位置に戻ってきた。いつの間にか、手元に杖がまた現れていた。
 「まあ、こんなところね」トンクスさんは言った。「発音が少し難しいかもしれないけど、やってみて」
 ミラはトンクスさんに促されるまま訓練用人形に向かって杖を構えて深呼吸をした。大丈夫、トンクスさんがやったことを真似してみせればいい。杖を下に振って、そこからぐるりと回して――
 「エクスペリメリウス!
 間違えた!と思ったときにはもう遅かった。ミラの放った呪文がトンクスさんに向かって、彼女のセーターの袖に火が点いた。
 「アハハ!」トンクスさんは自分の杖で火を消して笑った。「袖に火をつけるのも悪くないわね。きっと相手はびっくりするわ」
 「もう一回、やってみせてください」ミラはムッとして言った。「いきなり見せられただけじゃ覚えられませんよ」
 「そうね、ゆっくりやってみるから見てて」
 トンクスさんはミラの挑戦的な態度をおもしろがってか、ニヤリと笑ってもう一度杖を振った。
 ミラは全神経を集中させてトンクスさんの動きを目で追った。人形がさっきと同じように武装解除され、飛んでいくのを見届けると、ミラはすぐにまた杖を前に出した。
 「エクスペリアーミウス!
 今度こそ呪文は杖に命中したが、少しだけ車輪が動くだけで人形の手にはしっかりと杖が握られたままだった。
 「動きは悪くないわ。発音が問題ね」
 「少しだけ」ミラは悔そうに答えた。「英語はほとんど独りで勉強したんだ。マホウトコロでは呪文は日本語だったし……」
 「あなたの英語はとても上手よ。でも、魔法の杖はそこまで親切じゃないわ」トンクスさんが言った。「できそう?」
 「当たり前だよ」ミラは鼻息を荒げた。「だって私は――私は、学年で最初にマッチ棒を針に変えた魔女・・なんだから!」
 ミラは杖をギュッと強く握りしめて、目の前の訓練用人形を見上げた――ミラを見下ろしているおぞましい形相の髑髏が歪み、見知らぬ日本人の男の顔に変わった。それが自分の想像するシラトリの顔だとミラはすぐに気づいた。当然そんなことはありえない、幻覚だ。わかっているのにミラの腹の底は煮えくり返るほど熱くなった。ミラはさっきよりもっと強い力で杖を握りなおした。それに反応するように桜の杖がブルッと震えたような気がした――まるで自分と同じように怒りをあらわにしたかのように――ミラは感情に身を任せてひと思いに杖を振るった。
 「エクスペリアームス!
 トンクスさんに負けないくらいの紅の光がミラの杖から放たれ、訓練用人形の腹部に命中した。人形の杖は弾かれて空高く舞い上がり、そのまま午後の雲の波を掻き消えていった。同時に、人形は地面ぎりぎりまで仰向けに倒れ、そのまま頭を擦るように鈍い音を立てて飛んでいき、数メートル先で止まった。ミラはめまぐるしく回る視界の中でその光景をとらえた。というのも、ミラは自分の呪文の衝撃に耐えきれず、訓練用人形と同じようにバッタリとのけ反って倒れてしまっていたのだ。
 ミラもトンクスさんも何も言わないまま、少しの静寂があった。なにがどうなったのか。ミラはよろよろと上半身を起こして、もう一度しっかり訓練用人形を見直した。人形は倒れたまましばらく硬直していたが、少し経ったあとに勢いよく起きあがり、ゆっくりと車輪を回してこちらに戻ってくるところだった。
 「すっごい!すごいわ!ミラ!
 トンクスさんが、芝生に尻もちをついていたミラに駆け寄ってきて抱きついた。
 「すぐにここまで完璧に呪文を成功させるなんて!最初に言ったけど、これって簡単な呪文じゃないのよ。それに、そうよ、そうだったわ、あなたは一年生なのに!」
 興奮するトンクスさんをよそに、ミラは杖を振り上げたまま自分のやったことをぼーっと見ていた。
 「ミラ、大丈夫?もしかしてどこか怪我した?」トンクスさんは心配そうにミラの顔色を窺った。
 「大丈夫」ミラは呆けたまま自分の杖を見つめて続けた。「ただ、ひとつわかったことがあったんだ」
 「それって、なあに?」
 ミラは、つい先日杖に逃げられてしまったということをトンクスさんに話した。トンクスさんはときどき相槌を打って、それ以外は黙ってミラの話を聞いていた。
 やがてすべてを話し終えたミラは、自分の愚かさを嘲笑うように言った。
 「前の杖・・・は最初こそ懐いていてくれていたが、最後には心底私に愛想が尽きていたんだろう。私が、その、杖を振るうことに関心がなかったから」
 「知ってる。ハッフルパフ中が言ってるわ。ミラ・トウドウは魔法にとことん関心がないって」
 ミラはトンクスさんの顔から目を離さず、ゆっくり頷いた。そして自分の元から逃げ出した月桂樹の杖を思い浮かべ、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。自分では杖を丁寧に扱っているつもりだった。でもそれは彼女(彼かもしれないが)の気持ちに応えていたわけではないと、どうして気づかなかったんだろう。
 「きっと私は、たった今初めて魔法と向き合ったんだと思う」ミラは続けた。「……ああ、アダリンの言う通りだった。アベ先生にはすべてがお見通しだったんだ。私が杖を失うことになることも――そのあと、『カナの輪』で杖が必要になることも。だから私がマホウトコロを卒業したとき、母にこの杖を預けたんだ。強力な桜の杖を」
 ミラは、アベ先生のすべてを見透かすような目を思い出してうなだれた。
 「たしかにあなたの言う通りかもね」トンクスさん諭す声色で言った。「でも、それだけじゃないと思うわ、わたし」
 トンクスさんは、小首をかしげるミラの腋の下を支えて立ち上がらせた。
 「杖が素晴らしいだけじゃ、こんなにすぐ上達はしないわ。つまり、あなたもまた素晴らしい魔女なのよ。嬉しくないかもしれないけど……」
 「本来なら嬉しくなかっただろうね」ミラは苦々しい笑顔を浮かべた。「でも、今は違う。『カナの輪』の役に立ちたいんだ」
 自分の口からこんな言葉が出るなんて、奇妙な心地だ。ミラは柄にもない自分をごまかすかのようにローブ中についていた草を払ってその場を取り繕おうとした。それを見たトンクスさんはクスクス笑って、ミラの髪やゴーグルにもからみついていた草をひとつひとつ丁寧に取り除いてくれた。ミラはなんだか恥ずかしくなって、杖をわざとらしく振ってみせてトンクスさんに言った。
 「もっといろんな呪文を知りたくなったよ。トンクス先輩・・
 「トンクス……センパイ?
 トンクスさんは聞きなれない言葉に少し驚いていたようだった。しかし、驚いたのはミラも同じだった。トンクスさんをそうやって呼んだことは、まったくの無意識だったからだ――ミラは自分自身に戸惑ったが、続きを待っているトンクスさんに気付いてコホンと軽く咳払いをしてから急いで言った。
 「あー、日本の学校では、尊敬する上級生にそうやって敬語をつけるんだ……」
 「へえ……」
 トンクス先輩は少しなにかを考えるような表情を作ったが、すぐに顔をほころばせた。そして、これで決まりとばかり言い放った。
 「悪くないかも!いいわよ、このトンクスセンパイがこれからも教えてあげる」
 トンクスさんが愉快そうに高笑いをしてくれたので、ミラはホッとした。
 それからミラとトンクス先輩は時折学校や授業のことをおしゃべりしながら、何度も「武装解除術」の練習をした。初めて成功したときのような強烈な呪文こそもうかけられなかったものの、ほとんどは上手く唱えることができたので、そのたびにトンクス先輩はミラをこれでもかというほど褒めた。途中、ミラの手元が狂って他の生徒のお尻に呪文が命中してしまう出来事もあったが(先輩が、急にフレッドとジョージのことでミラをからかったのだ)、トンクス先輩との練習はとっても楽しい時間そのものだった。
 「そろそろ終わりにしましょうか」
 トンクス先輩が一息入れるまで、ミラは訓練場の人形たちが夕日でまっ赤に照らされていることにまったく気がつかなかった。ミラはそれほど練習に夢中になっていた。杖を振っていて、こんなにも時間が滑り抜けていくことがいままであっただろうか。
 トンクス先輩が、よくやったといわんばかりにミラの肩に手を置いてニコニコしている。そんなトンクス先輩の表情に思わず嬉しくなってしまうことすら、不思議に思えていた。
 「付き合ってくださって、ありがとうございました」
 ミラがぎこちなくお辞儀をすると、トンクス先輩はプッと噴き出した。
 「いやだなあ。さっきまでみたいに気楽に話してくれていいのよ、ミラ」
 トンクス先輩の物言いに、ミラはいつのまにか彼女に向かっていつもの・・・・堅苦しい口調をすっかり使わなくなっていたことに気がついた。
 「あ、えっと、ごめんなさい!」
 「ちょっと、今更元通りにしようだなんて思わないでよね」先輩は辟易した顔をした。「わたし、あなたと仲良くなれてすっごく嬉しいんだから!」
 「ありがとう、トンクス先輩。その、わたしも同じ気持ちだよ」ミラはゴーグルと頭の間を掻いて言った。
 ミラの反応に満足がいったのか、トンクス先輩は夕食に遅れちゃう、と城に向かって歩きだした。しかしミラは先輩のあとには続かず、立ち止まって彼女の背中を眺めていた。
 ――トンクス先輩はこれからアリーシャに言われた通りの決闘呪文をミラに教えようとしているのだろう。カナの輪の下級生が自分の身や友人だけは守れるように。
 しかし、実はミラは呪文を成功させたときからずっと別のことを思っていた。アベ先生はきっと、「カナの輪」に入ってただ上級生の手助けをするためだけに杖を母に託したわけではないはずだと。すべてはカズヒロ・シラトリを倒すため、そのときのためにこの桜の杖を受け取ったのだと、ミラはそう信じて疑わなかった。
 こんなことを言ったら、皆はどんな顔をするだろうか――アダリンは泣いて、やめてくれと懇願するだろう。あの好奇心の塊のようなフレッドとジョージでさえ、一度はミラを止めるかもしれない。
 「ほら、いくよ。ミラ」
 トンクス先輩が振り返ってミラに言った。密かに闘心を燃やすミラにはまったく気づいていないようだった。
 ミラは、怪訝そうな様子の先輩を尻目に、トコトコと訓練用人形まで近づいていってその場に屈み込んだ。
 「先に戻っていておくれ。調べたいことがあるんだ」ミラは顔だけをトンクス先輩に向けた。
 トンクス先輩が微かに眉間に皺を寄せたが、ミラはそれをあえて無視した。訓練場についたときからずっと気になっていたことあったのだ。
 「やっぱり。この車輪、マグル製品と同じだ」      
 

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